恩師の元を訪ねて

高校時代からお世話になっている恩師・小倉啓介先生の元を約1年ぶり訪ねてまいりました。私の生徒の受験(都立総合芸術高校作曲専攻志望の生徒の仕上げをお願いしました。)に際してご指導をお願いしていて、先生のご指導、生徒の頑張りの賜物で無事に受験を良い形で終えることができましたので、そのお礼も兼ねて自身の近況報告をしに。ここ数年、恩師に顔向けできないような心境でなかなか足が遠のいていましたが、ようやく。

先日のトロンボーン科定期を聴きに行ったのは、主に池野成先生の古代的断章が目的でした。

トロンボーン定期、お疲れ様でした!

池野成先生は、1950年代前後の映画の劇版音楽を多く手がけた作曲家として知られていますが、彼の一番弟子が私の師である小倉先生なのです。古代的断章の初演は約40年前だそうで、トロンボーン科のために書かれた曲だそうですが、その特異な編成から今日まで演奏されることはなかったとのこと。小倉先生がちょうど私と同じくらいの年に初演に立ち会っていたのだと思うと、なんだか感慨深いなと思いました。そして、幸運なことにその初演時のコンダクタースコアが小倉先生のご自宅にあるとのことでしたので、そちらを拝見することができました。

緻密且つ、ちゃんとアンサンブルが成立する譜面…

私は作曲の先生方に音楽人生(というよりかはむしろ、人生かもしれない)を救われた場面が幾度かあって、この先もどんな形であれ作曲を続けて、その恩を返していかないといけないなぁ…なんてことを最近思っていたのですが、小倉先生が「池野先生への借りをどう返せばいいか…と思っているところで池野先生が亡くなってしまって…、奥様にそう言ったら、同じように教えてあげてと仰って…」なんてことを仰っていて、音楽の恩は音で繋がっていくのだ、なんてことをしみじみ思いつつ、私も心を新たに頑張り直そうと心に誓いました。人生は同じことを繰り返してるように見えても、実際は螺旋階段のようなもので、似たところを通っても同じところを通ることは2度とないんだよ、という言葉が印象的で。結局、私の音楽人生はピアノと作曲両方あってこそなんだろうな…諦めて、しっかり誠実に頑張っていこう…。

…これでいいのだ!(哲学)

先生は断捨離中だそうで、大量の貰い物を。「自分も池野先生からたくさん貰い物したし、いいのよ〜」と言われても、さすがに貰いすぎて申し訳なく思ってしまうレベルの量。いやはや、頭が下がります…ありがとうございます。

これに加えて、先生の鞄とMIDIキーボードまで…筋トレの甲斐あってか、軽々家まで運びました。

小倉先生にお会いすると、この先も荒波は待ち受けているだろうけれど、自分はこれからも変わることなくきっと大丈夫だ、と思い直すことができるので本当に師の存在は大きなものです。今も昔も、作曲の道で人生が救われているのは事実。今までいただいてきた、あるいはこれから頂くであろう師への恩を返していきたいなと思う今日この頃です。先生に次お会いできるのはいつの日やら。その日まで、誠実にこつこつ頑張っていきます。

私愛用の楽譜カバン(左)と、先生が愛用なさっていた楽譜カバン(右)。なんか、カバン並べるだけでも師弟って感じ〜笑